医療の現場から『皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)について』(2017.01)

当科は2人の皮膚科専門医が診療を行っております。蜂窩織炎、帯状疱疹などの急性疾患の診療、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などの慢性疾患の診療、および皮膚腫瘍の外科治療を行います。
地域医療支援病院の役割として入院が必要な患者さんの治療に対応し、一般クリニックの外来業務時間内には行いにくい、軟膏処置法の指導や生活指導に時間をかけて取り組むよう努めております。

今回は冬に受診者数が増える皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)について紹介いたします。
皮脂欠乏性湿疹は皮脂や角質細胞間脂質、天然保湿因子が減少した結果、乾燥肌の傾向が強くなることが原因と考えられています。乾燥肌の傾向は加齢に伴って、あるいはアトピー素因のような体質に伴って強くなることが知られています。さらに冬期は暖房を使用することにより屋内の湿度が下がるため、乾燥肌の傾向がより強くなります。乾燥肌の状態では皮膚バリア機能が低下し、外的刺激が皮膚の知覚神経に到達しやすくなるため、かゆみが生じやすくなります。かゆみにまかせて皮膚を掻爬すると皮膚バリア機能がさらに低下し、「痒いから掻く、掻くから痒い」という悪循環に陥ります。この結果、乾燥肌をベースに湿疹を生じる皮脂欠乏性湿疹にいたります。

皮脂欠乏性湿疹を治療するにあたり、当科で行っている指導を紹介します。一つ目は入浴習慣に関する指導、二つ目は正しい外用処置法の指導です。皮脂欠乏性湿疹の患者さんは、入浴時に皮膚をナイロンタオルや手ぬぐいでこすっている方が多くいらっしゃいます。また入浴時間が長い、入浴回数が多いといった患者さんもいらっしゃいます。皮膚をこすることは掻くことと同様に皮膚バリア機能を低下させ、かゆみが生じやすくなります。石けんは皮脂を取り除く方向に作用し、湯船に長時間つかると湯水に皮脂が溶け出して皮膚が乾燥します。当院皮膚科外来では、適切な入浴法や入浴時間を患者さんのライフスタイルに合わせてアドバイスし、同時に保湿剤や湿疹に外用するステロイド剤の塗り方を実演しながら指導しています。
こうした指導を行うことにより、皮脂欠乏性湿疹の患者さんに湿疹が生じる機序や乾燥肌との付き合い方を学んで頂きます。

皮膚科診療を通じて地域の方々の健康に少しでもお役に立てることができれば幸いです。皮膚疾患でお困りのことがありましたらご遠慮なくご相談ください。

(JCHO札幌北辰病院 皮膚科 安藤 佐土美)

< 戻る     次へ >

「医療の現場から」一覧へ戻る