医療の現場から『産婦人科の腹腔鏡下手術』 (2014.10)

現在、産婦人科領域、特に良性疾患における手術は腹腔鏡下手術が主流となっています。
産婦人科領域における腹腔鏡の歴史は古く、1950年代より主に検査を目的として始められました。その後、1990年代から腹腔鏡による手術が行われるようになり、2014年からは一部の子宮体癌に対する腹腔鏡下手術も保険収載されました(当院では悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は行っておりません)。

腹腔鏡下手術は従来の開腹手術や腟式手術に比較すると以下のようなメリットがあります。
まず、手術創部が非常に小さいため美容面で優れます。当科での腹腔鏡下手術は筒を4か所腹腔内に挿入して行い、それぞれの創は2.4mm〜12mmで済みます。
また、身体に対する侵襲が軽度であるため術後の回復が早く、早期の社会復帰が可能です。手術の内容にもよりますが、入院期間は5〜7日間と開腹手術や腟式手術に比べ約4日間程度短くなります。
また、術者から見た最も有益な点は、カメラによる拡大視野で極めて精密で丁寧な手術を行えることです。肉眼では見る事の出来ない細かな部位や、骨盤内の非常に深い部位での操作も可能ですし、温存すべき臓器を愛護的に扱う事が出来ます。そのため、今後の妊娠を希望される方への子宮や卵巣の手術では特に有用な手術法です

ただし、メリットばかりではありません。腹腔鏡下手術は、モニターで対象物を見ながら、腹腔内という閉鎖空間で鉗子を使用して行うため、開腹手術に比較すると直感的な操作が困難で、術者には高度な技術が必要です。

では、どのような医師が腹腔鏡下手術に習熟しているか分かる方法はあるのでしょうか? そのための最も簡単な方法は、日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医であるか確認するというものです。技術認定医とは執刀100例以上、学会発表や論文執筆、手術ビデオ審査を経て合格した場合に認定されます。日本産科婦人科内視鏡学会のホームページで技術認定の一覧を見る事が出来ます。北海道には2014年9月現在、33人の技術認定医がおりますが、私もその一人です。当院で行われる婦人科の腹腔鏡下手術には全例私が手術に入り、患者様の安全を第一に日々手術を行っております。

当院での婦人科内視鏡手術の対象となる疾患には、子宮筋腫、子宮腺筋症、良性卵巣腫瘍、子宮内膜症、子宮外妊娠などがあります。現在、これらの疾患でお悩みの方がおられましたら気軽にご相談ください。最適な治療法を御紹介いたします。

(JCHO札幌北辰病院 産婦人科 足立英文)

< 戻る     次へ >

「医療の現場から」一覧へ戻る