医療の現場から『マダニの話』 (2013.09.30)

皆さん、マダニをご存知でしょうか? 蜘蛛の仲間で体調は約1mm、原野や笹藪などに生息しています。動物が動くことによる振動と、動物が呼吸することによる二酸化炭素の濃度を感知して(マダニには目がありません)、植物から落下して動物に取りつきます。そして血を吸います。十分に血を吸うと、動物から離れて脱皮、あるいは産卵します。

北海道には約15種類のマダニが生息しています。その中でヒトの血を吸うことが知られているものは、ヤマトマダニとシュルツエマダニ、パブロフスキーマダニです。ヒトに取り付いた後、ヒトの皮膚を切って口下片(こうかへん)というとげのようなものを挿入して血を吸います。取り付いて間もなければダニを容易に取り除くことができますが、時間がたつと口下片の周囲がセメント質で覆われて、容易に除去できなくなります。無理矢理取り除こうとすると虫体がちぎれて口下片が皮膚にのこり、炎症が長引く原因になります。また、シュルツエマダニとパブロフスキーマダニの体内にはボレリアという微生物がいることがあり、吸血の際にそれがヒトに感染すると、ライム病になることがあります。

マダニの活動期は4月~8月ですから、その期間に森林散策や登山、山菜取りに行く時は袖口がしまった長袖を着用する、長ズボンの裾はソックスの中に入れるなど、出来るだけ肌を露出させない服装で行き、帰ってきた後に自分の体にマダニが付いていないかをくまなく調べ、マダニが刺さっていたら医療機関を受診することをお勧めします。念のため付け加えますが、マダニに刺された全てのヒトがライム病になるわけではありません。

(札幌社会保険総合病院 皮膚科 安藤佐土美)

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