医療の現場から『アニサキス症』 (2012.06.13)

アニサキス症は、アニサキス亜科に属する幼線虫が寄生する海産魚介類(サバ、イカ、カツオ、アジ、イワシ、サケなど)を生食することにより、人体に侵入して引き起こす病態であり、生鮮魚介類を摂取する週間のあるわが国では比較的遭遇する疾患です。
消化管アニサキス症の罹患部位として大部分は胃ですが、消化管全域に及びます。

胃アニサキス症の症状は、生鮮魚介類の摂取数時間後からの上腹部の激痛または間欠的な痛みであり、悪心・嘔吐などの消化器症状があります。まれに無症状のこともあり、内視鏡検査時に偶然発見されることもあります。
無症候性のものは過去にアニサキスに感作されていない初感染の場合で、局所のアレルギー反応が主体で、過去に感作されたことのある再感染の場合には、即時型アレルギー反応が局所に強く表れ、消化管の攣縮や粘膜の浮腫を生じ、腹痛や消化管症状を誘発すると考えられています。

胃アニサキス症が疑われた場合は、上部消化管内視鏡検査を行い、内視鏡下に虫体を摘出します。虫体数は1隻のことが多いですが、複数例も稀ではなく、中には56隻のアニサキス幼虫を内視鏡的に摘出しえた報告もあります。
通常摘出後すみやかに自覚症状は消失、虫体刺入による粘膜浮腫、びらんは1~2週間で消失します。アニサキス虫体は人体中にて1週間程度で死滅するといわれており、特に虫体摘出の困難な小腸においては保存的治療が可能なこともあります。

予防策として、虫体は-20℃以下で24時間、60℃以上の環境下であれば短時間で死滅するといわれていますが、生鮮魚介類の生食を好む本邦の食習慣では難しいところもあるでしょう。
調理時や摂食時に気をつけることが重要だと考えます。

(消化器内科医長 今井亜希)

< 戻る     次へ >

「医療の現場から」一覧へ戻る