冬期間には多くの感染症が流行しますが、乳幼児期の子供さんで特に問題になるウィルスについていくつかご紹介いたします。
①RSウィルス
2歳までにはほぼすべての子供さんがかかるウィルスです。
症状は発熱や咳が主なものであり、小さいお子さんほどゼーゼーして「夜眠れない」、「咳き込んで嘔吐する」といった症状が前面にでます。
近年は1歳未満の方については迅速診断キットですぐに診断することが可能になりましたが、残念ながら抗生剤や抗ウィルス剤等でウィルスを退治することが出来ませんので、咳止めや痰切り、熱さましといった症状を和らげる薬を使用し、経過をみることになります。時に水分が取れない、呼吸が苦しいということで入院が必要になることもあります。
特に早産の子供さんや心臓や肺に病気を持っている子供さん達がこのウィルスにかかると症状が重くなりやすいことが知られています。シナジスという注射薬を流行期に行うことで重症化の予防が出来ますので、主治医の先生または当科の医師にご相談ください。
②ロタウイルス
乳幼児の胃腸炎を起こす代表的ウィルスです。
通常、発熱や嘔吐、白色の下痢便といった症状で発症しますが、重症化しやすく脱水症状で入院していただくこともしばしばあります。
このウィルスも便を調べることで、迅速診断することが可能ですが、抗生剤、抗ウィルス剤は効きません。そのため、少量ずつ水分をとりつつ、嘔気止め等を用いて症状を抑えつつ、症状が落ち着くのを待つことになります。非常に感染力が強く、よく保育園や幼児園で集団感染が起こります。通常のアルコール消毒では退治できませんので、次亜塩素酸(ブリーチ等に含まれる塩素系の消毒剤)で消毒することが必要です。
時に胃腸炎症状だけでなく、けいれんを起こすこともありますので、その場合は病院にすぐに受診することが必要です。
近年、任意接種ですがロタウィルスワクチンが実施できるようになり、重症化を防ぐことが可能になりました。接種希望の方は主治医の先生または当科医師にご相談ください。
③インフルエンザ
すべての年齢の方に冬期流行する有名なウィルスです。乳幼児から学童、青年期すべての小児において注意が必要なウィルスです。
38-39℃台の発熱に加え、咳、鼻水といった風邪症状や頭痛、関節痛、筋肉痛、全身のだるさといった全身症状を伴うことが特徴です。時に肺炎や脳炎・脳症といった合併症がでます。
ワクチンによる予防に加え、もし感染した場合は発症後早期であれば抗ウィルス剤を使用し、治療することが可能です。ただし、迅速診断は発症後すぐに実施した場合陰性と判定されることがあるので解釈に注意が必要です。
学童、青年の患者さんについては発症後早期に異常行動を起こす患者さんがいることが知られていますので、診断後1-2日は特に注意して観察してください。
(JCHO札幌北辰病院 小児科 木澤敏毅)