医療の現場から『肛門外来について』 (2013.09.04)

肛門疾患の中で最も多いのは痔核です。肛門と直腸下端の周辺には網の目のような血管(静脈)があります。この静脈が膨らんでこぶ状になったもの(静脈瘤)が痔核の本体です。この静脈瘤から出血したり、静脈瘤内に血栓(血豆)を作って腫れるなどの症状が発生します。

直腸下端の粘膜下にできたものを内痔核、肛門(歯状線より外)の肛門上皮下にできたものを外痔核と言います。内痔核は痛みを感じませんが、出血をするのが特徴です。また、周囲の支持組織が弱くなって肛門外に脱出するようになったものを脱肛と言います。脱肛も初めのうちは指で押し込めば戻りますが、更に進行すると戻らなくなり痛みを伴うこともあります。

痔核の治療法として、出血や痛みに対しては保存的治療を主にします。肛門を清潔にして温め、便秘や下痢にならないように便通を整えます。食事療法だけでは便通が整わない場合には、整腸剤や緩下剤を服用します。それに加えて、坐薬や軟膏を使用し、症状に応じて鎮痛剤や抗炎症剤を服用します。

脱肛の治療には手術が必要でしたが、最近では手術以外の治療も行われるようになってきています。内痔核に注射をして痔に流れ込む血液の量を減らし、痔を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法です。痔核を切り取る手術と違って、痔核の痛みを感じない部分に注射するので、「傷口から出血する」「傷口が痛む」と言う事は少なく、入院期間の短縮も期待できます。

今後当院でも注射による内痔核の治療に積極的に取り組んで行きたいと考えております。

(札幌社会保険総合病院 外科 谷安弘)

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