医療の現場から『乳腺外科』 (2013.07.31)

当院外科ではこれまで専門外来として乳腺外来を設置し、診療を実施していました。今年の6月からは乳腺外来を「乳腺外科」と正式に標榜し診療を実施しています。乳腺疾患の診療の中でも、乳がんの早期発見および診断を目的の一つとしております。

毎年乳がんになる人は増加しており、現在全国では年間5万人以上の人が乳がんにかかっております。乳がんに罹患する年齢はこれまで40歳代の方が多いとされていましたが、最近では閉経後の乳がんが増加しているというデータもあります。

乳がん検診は、以前は視触診による検診でしたが、それでは乳がんの死亡者数を減らすという効果は得られませんでした。これに対してマンモグラフィ検診は、しこりとして触れる前の早期乳がんを発見できる可能性があり、現在では40歳以上の女性に対してマンモグラフィ検診を行うことにより死亡の危険性を減らすことが証明されています。
欧米ではマンモグラフィ検診受診率が60~80%に達し、乳がんで亡くなる人は減少しています。しかし、日本での受診率は20%程度で、乳がんでなくなる人は増え続けています。多くの人がマンモグラフィ検診を受けるよう望まれています。

視触診、マンモグラフィによる検診で異常があった場合、精密検査を受けることになります。精密検査を受ける人の割合はおよそ10人に1人で、精密検査を受けた人の約50人に1人が乳がんと診断されています。精密検査は、まず2方向でのマンモグラフィ撮影、超音波検査が行われます。その後必要な場合には、CT、MRI、細胞診、組織診などが行われます。

乳がんをなるべく早い時期に発見することによって、より小さな手術ですむことが多く、また、手術後の薬による治療も少なくなり、一番重要な生存率の向上につながります。乳がん検診で精密検査が必要と言われた、あるいは、乳房にしこりがあるなど少しでも気になることがありましたら、乳腺外科を受診して下さい。

(札幌社会保険総合病院 外科・乳腺外科 高橋学)

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