医療の現場から『突発性難聴 早めの受診を』 (2013.01.30)

突発性難聴とは、文字通り突然発症する、原因不明の一側性感音難聴です。突然難聴になる疾患はほかにもいくつかありますが、それらを除外して原因が明らかでないものを突発性難聴として治療しています。

特徴は、○月△日に聞こえていないことに気付いた、朝目が覚めて気づいた、というように発症の日にちを特定できるケースが多いことです。耳鳴やめまいを伴う場合も多くみられます。難聴が良くなったり悪くなったりといった変動は見られません。
内耳循環障害やウイルス感染など複数の病態が絡んでいると考えられている病気です。

患者さんが受診されたら、問診、鼓膜の診察、聴力検査を行い、めまいを伴う場合には眼振検査も行います。また、突発性難聴のうちの数%に聴神経腫瘍が隠れていることがあり、MRIで聴神経腫瘍の有無を確認しています。

治療の主体は、ステロイドで、およそ1~2週間かけて漸減投与します。ほかに、内耳循環の改善目的として血管拡張薬やビタミンB12製剤の内服、低分子デキストラン、プロスタグランディンE1製剤の点滴を併用します。

治療後の聴力予後については、治癒するものが1/3、回復はするが難聴の残るものが1/3程度です。また、予後推定因子として、1)初診時の聴力レベル、2)年齢、3)めまいの有無、4)治療開始までの期間などがあり、高度難聴、高齢、めまいを伴う、発症から来院までの日数が長い、といった場合に聴力余語はより不良となる傾向があります。

4)の発症から治療を開始するまでの期間は、患者さん自身の意思にも因るところです。
突発性難聴では、一般に発症後1ヶ月の間に内耳障害が可逆性のものから不可逆なものへ移行すると考えられています。つまり、発症から約1ヶ月で聴力は固定してしまう(それ以上改善しなくなる)ということです。治療開始日が発症から1週間を過ぎると少しずつ聴力予後は悪くなり、2週間を過ぎるとさらに低下し、改善例はどんどん減少していきます。
この病気は発症早期の治療が大切です。おかしいな、と思ったら、躊躇せず早めに受診されることをお勧めいたします。

(札幌社会保険総合病院 耳鼻咽喉科医員 寺田木の実)

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