医療の現場から『フィッツ・ヒュー・カーティス症候群』(2012.11.08)

今年の4月から総合診療科で診療しております渡邉です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

当科では患者さんを総合的に診療することを目指しております。更に高度な医療が必要な場合には当院のそれぞれの専門科を紹介させていただき治療をお願いしております。

外来で総合的に診療しておりますと、色々な症状の患者さんを診療し珍しい疾患を経験する機会があります。
たとえば、皆様はフィッツ・ヒュー・カーティス症候群をご存知でしょうか。

この疾患は若い女性に多く、主症状はかなり強い腹痛が腹部の真ん中から右上腹部にかけて起こります。
他の症状として微熱があるくらいで、血液検査では炎症所見に乏しく、肝障害も軽症でありますので診断に苦渋することが度々あります。
症状等より胃腸炎などの消化器疾患と間違われて、胃腸薬等が処方されることがよくあるそうです。

実は、この疾患は、婦人科疾患であり、原因体はクラミジアであり骨盤内炎症性疾患の上行性感染による肝周囲炎が病態であります。

腹腔鏡で観察しますと、肝臓の表面の被膜だけに限局性の炎症が起こるため、そこにバイオリンの弦のような繊維性の白い癒着が認められます。
最近、診断には造影CT所見が非常に役立っております。造影早期相にて肝臓前面の表面に淡い造影増強効果が高頻度で確認されます。
治療としては、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質が使用され、2週間ほど投与することで治癒いたします。

このような珍しい疾患も総合診療科では時々診療することがあります。

(札幌社会保険総合病院 総合診療科部長 渡邉智之)

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