医療の現場から『気管支喘息と吸入指導』 (2012.09.28)

気管支喘息は突然の咳や呼吸困難を症状とする病気です。喘鳴といわれる喉からヒューヒューと音が聞こえるのも特徴的で、呼吸器疾患の中で最も多いものの一つです。

治療法は日進月歩で、色々な薬が開発されています。1990年代前半までは気管支喘息による喘息発作の年間の死者数は6000人以上でした。あのテレサテンも喘息発作で命を落としたと言われています。
それが治療法の進歩により、現在の年間の死者数は3000人以下となっています。その一番の要因となっているのは吸入ステロイドの登場です。気管支喘息の原因にかなり近い部分である気道炎症をこの吸入ステロイドにより抑えられるようになりました。
しかし、現在もたくさんの方々がこの気管支喘息で命を落としています。今後も気管支喘息の診断、吸入ステロイドをはじめとした様々な治療の普及が必要と考えられます。

しっかりとした気管支喘息の診断がなされ、治療が導入された後もなかなかコントロールがつかない場合もあります。そのようなとき一番に考えることは気管支喘息の病勢が強い場合や、その他の疾患が絡んでいることです。それ以外で気管支喘息のコントロールが不良となる原因として「吸入薬をしっかり吸入をしていない、あるいはやっているつもりができていない」ことが考えられます。
気管支喘息の発作を軽くするためには、苦しくないときにもしっかり吸入を続けることが大事です。喘息の発作がないからといって吸入をサボってしまうと、いざ発作がおきたときに大変なことになります。

吸入薬には様々な種類があり吸入の仕方は様々です。自分では吸入できているつもりが実はうまく吸入できていないこともあります。
当科ではそのような方のために最寄の薬局と協力し吸入指導に力をいれています。吸入指導とは、対象の患者さんが薬局で吸入薬をもらうときに、実際に吸入できているかどうか・吸入のコツなどを薬剤師さんから教えてもらう取り組みです。当院では昨年から始まっている吸入指導ですが、評判は上々で今後の広がりが期待されています。

治療法を探求しつつ色々な取り組みを模索し、少しでも気管支喘息で苦しむ人が減るように願って已みません。

(札幌社会保険総合病院 呼吸器科医員 矢部勇人)

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