診療・各部門
診療内容
消化器、呼吸器、乳腺疾患などに対して、院内の消化器内科、呼吸器内科、小児科、放射線科などと協力して、治療にあたっています。各疾患ごとの診療内容は下記をクリックしてご覧ください。
消化管疾患
胃がん
胃がんにかかる患者さんは40歳代後半から増加し始めます。胃がんにかかる患者さんの人数は近年減ってきてはいますが、全がんの中で胃がんで亡くなる患者さんの数は、男性では第2位、女性では第3位となっています。
【症状】
胃がんの症状としては、早期の段階では無症状のことが多く、健康診断で見つかる場合が多いです。進行した段階では胃の痛み・不快感・違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などがありますが、これらは胃がん特有ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合でも起こります。食事がつかえる、体重が減るといった症状は、進行胃がんの可能性もあります。
【治療】
胃がんの治療は、1.手術、2.内視鏡治療、3.抗がん剤治療が主に行われます。どの治療法を行うかは、病気の進行度と患者さんの状態によって胃癌治療ガイドラインを参考にして決定しています。消化器内科と外科で協力して治療にあたっており、進行度に合わせて治療法を選択しています。
【手術】
進行度ⅠA期~ⅢC期までの患者さんには手術が推奨されます。
胃がんが胃の真ん中~出口寄りに発生した場合は胃の2/3~3/4切除(幽門側胃切除術/図1)、胃の入り口寄りに発生した場合は胃の全切除(胃全摘/図2)を行います。胃の周囲のリンパ節も含めて切除します。
がんの進行度に合わせて術式を選択しており、早期の場合は、腹腔鏡下手術(図3)を行っています。腹腔鏡下手術は傷が小さく、手術後の痛みが少ないこと、整容性に優れていることなどの利点があります。(図4,図5)一方、胃がん手術では根治性(がんをしっかりと取り除くこと)が最も重要であるため、進行がんの場合は開腹手術を主に行います。治療時に病状を含めて詳しく説明しますので、その際にご質問ください。
図1:がんが胃の中~下部に存在 |
図2:がんが胃の上部に存在 |
図3:腹腔鏡下胃切除術の実際 |
図4:開腹手術の創 |
図5:腹腔鏡手術の創 |
大腸がん
大腸がんにかかる患者さんは40歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。男性の方が女性の約2倍なりやすいとされています。新規に大腸がんにかかる患者さんの数は全がんの中で一番多く、大腸がんで亡くなる患者さんの数は肺がんに次いで2番目に多い病気です。肥満、飲酒、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージ)の摂取などは、大腸がんになりやすくする可能性があると考えられています。また、遺伝的に大腸がんになりやすい家系(家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸がん家系)の方がいます。
【症状】
大腸がんの症状としては、早期の段階では無症状のことが多く、健康診断(便鮮血陽性)で見つかる場合が多いです。進行した段階では血便、便が細くなる、残便感、下痢と便秘の繰り返しなど、排便に関する症状などがみられるようになります。また、がんによる腸閉塞から嘔吐などで発見されることがあります。
【治療】
大腸がんの治療は、1.手術、2.内視鏡治療、3.抗がん剤治療が主に行われます。消化器内科と外科で協力して治療にあたっており、病気の進行度と患者さんの状態によって大腸癌治療ガイドラインを参考にして治療法を選択しています。
【手術】
進行度Ⅰ期~Ⅲ期の患者さんには手術が推奨されます。大腸がんの発生部位により大腸の切除範囲が決まり、所属するリンパ節を併せて切除します(図1)。全国的に大腸がんは進行がんに対しても腹腔鏡手術が行われており、当科でも積極的に腹腔鏡手術を行い、早期回復を目指しています(図2,図3,図4)。
直腸癌では可能な限り肛門温存を追及し括約筋間直腸切除術(ISR)も行っております。また人工肛門を付けなければならなくなった場合でも人工肛門専門の看護師とともにストマ(人工肛門)ケアを行っております。
大腸がんに由来する肝転移、肺転移に対しても、手術の前後に抗がん剤治療を加えながら積極的な切除を目指しています。
盲腸~上行結腸 ⇒ 回盲部切除 |
上行結腸~横行結腸 ⇒ 右半結腸切除 |
横行結腸~下行結腸 ⇒ 左半結腸切除 |
S状結腸 ⇒ S状結腸切除 |
直腸 ⇒ 直腸切除 |
図1:大腸の切除範囲 |
図2:腹腔鏡下大腸切除の様子 |
図3:腹腔鏡下S状結腸切除術の実際 |
図4:腹腔鏡手術の創 |
虫垂炎
虫垂炎とはいわゆる「もうちょう」で、虫垂が化膿して炎症を起こした病気です。虫垂とは大腸の入り口(盲腸)から垂れ下がっている管です(図1)。虫垂の形や長さ、位置などは個人差がありますが、一般的に長さは5~8cm前後で径は5mm前後です。虫垂の中に便や食べ物のかすなどが入り込んで詰まり、そこに腸管内にいる細菌が増殖して、虫垂炎になると考えられています(図2)。
【症状】
みぞおち付近から右下腹部へ移動する腹痛が突然起こります。嘔気、嘔吐やおなかが張った感じを伴うこともおおいです。発熱もみられます。高齢者では症状があまりはっきりしないことがあります。
【治療】
虫垂炎の治療は、1.手術、2.抗生剤治療が主に行われます。軽症の場合には抗生物質の投与により炎症をおさえることが期待できますが腹膜炎の疑いがある場合には緊急手術が必要になります。
【手術】
開腹手術に比べて傷が小さい腹腔鏡下虫垂切除術を基本とし(図3,図4)、さらに創が少ない単孔式手術を積極的に行っています(図5)。
図1:虫垂の位置 |
図2:腫大した虫垂 |
図3:開腹手術の創 |
図4:腹腔鏡手術の創 |
図5:単孔式腹腔鏡下虫垂切除術後2週間の創 |
肝胆膵疾患
肝がん:原発性肝癌・転移性肝癌
肝がんは原発性肝癌(肝細胞癌、肝内胆管細胞癌)と転移性肝癌に大別されます。
原発性肝癌は慢性肝炎(B型・C型肝炎ウイルス)に続発して発症することが多く、慢性肝炎治療のための消化器内科通院中に無症状で見つかる場合があります。一方、他の疾患の検査査・治療時に偶然見つかったり、症状が出現してから発見される場合もあり、進行度は様々です。病気の進行度に合わせて消化器内科・外科・放射線科で協力して治療法を選択しています。
転移性肝癌は肝臓以外の部位に発生した「がん」が肝臓に転移したものです。肝臓手術の適応となるのは大腸癌からの転移したものが最も多くなります。当院では進行した症例に対しても「二期的肝切除」や「門脈塞栓術」を併用して積極的に「根治に向けた手術」を行っています。肝臓外科の手術は大腸癌の再発などでは、「大腸手術専門医」ではなく「肝臓外科専門医」の治療が必要となります。他院で大腸癌の手術を受けた後に再発した場合でも、診断・治療に当たりますのでご相談ください。
図1:肝細胞癌、肝内胆管細胞癌、転移性肝癌 |
図2:肝切除術の実際 |
胆石症
胆石症とは、胆管や胆のうなどに石ができる病気です。胆のうにできるのが全体の3/4、胆管に1/4できます。胆管とは肝臓と腸をつなぐ管で、胆のうは胆管の途中にある小さい袋です。肝臓で消化液である胆汁が作られます(この胆汁が何らかの原因で固まると胆石になります)。この胆汁は、胆管を通って肝臓の外にでて十二指腸に流れ込みます。胆嚢の位置は、みぞおちと右のわき腹を結んだ線の真ん中あたりの奥のほうにあります。女性、肥満、中高年、高トリグリセリド血症、経口避妊薬内服・急激なダイエットをした方に多いことがわかっています。
【症状】
右の肋骨の下あたりの差し込むような痛み、発熱、黄疸、肝機能異常などです。
【治療】
胆石症の治療は、1.手術、2.内服治療(溶解療法)、3.経過観察(様子を見る)が主に行われます。何らかの症状をおこした胆石症については手術により胆嚢ごと胆石をとってしまうことをおすすめいたします。
【手術】
傷が小さい腹腔鏡下胆嚢手術を基本とし、さらに創が少ない単孔式手術を積極的に行っています。
図1:腹腔鏡手術の様子 |
図2:腹腔鏡下胆嚢摘出術の実際 |
開腹手術(10-20cmの創1か所) |
腹腔鏡手術(約1cmの創4か所) |
単孔式腹腔鏡手術(臍に2cm大の創1か所) |
図3:各術式の創 |
胆管がん・胆嚢がん
胆管とは肝臓と腸をつなぐ管で、胆のうは胆管の途中にある小さい袋です。ここにできるがんは50歳代以降増加します。胆嚢がんの死亡率は女性のほうが高く、男性の約1.2倍、胆道がんでは男性のほうが高く、女性の約1.7倍です。日本人は他の東アジアの国の人やアメリカの日系移民、欧米人に比べて高い傾向があります。
【症状】
主な症状は食欲不振、全身倦怠感、腹痛、黄疸などですが 他の疾患の検査・治療時に偶然見つかったりする場合もあり、進行度は様々です。
【治療】
病気の進行度に合わせて消化器内科・外科・放射線科で協力して治療法を選択しています。
【手術】
胆管がんおよび胆嚢がんの手術治療では、肝臓・膵臓・胃などの消化管に関連した術式が選択されることが多く、専門的修練を必要とされます(図1)。
肝臓切除や膵頭十二指腸切除など、腹部手術では難易度の高いとされる手術手技が必要となります。術式の選択に関しては病状に合わせて行います。
上部胆管 |
中部胆管 |
中~下部胆管 |
胆のう |
図1:胆管がん、胆嚢がんの切除範囲 |
膵がん
膵臓は胃の後ろ体の奥にある臓器です。膵臓の役割は、1.消化液(膵液)の産生、2.インスリンなど血糖を調整するホルモンの産生です。膵がんは60歳ぐらいから増加して、高齢になるほど高くなります。男性のほうが女性よりかかりやすいです。
【症状】
早期の膵がんでは特徴的な症状はありません。進行すると黄疸や糖尿病が悪化したりします。膵臓は体の奥に位置し、早期では症状も乏しく早期発見が難しい病気です。
【治療】
病気の進行度に合わせて消化器内科・外科・放射線科で協力して治療法を選択しています。
【手術】
膵がんの手術治療では膵頭十二指腸切除など、腹部手術では難易度の高いとされる手術手技が必要となります。術式の選択に関しては病状に合わせて行います。
図1:膵頭部癌 ⇒ 膵頭十二指腸切除 |
図2:膵体尾部癌 ⇒ 膵体尾切除 |
呼吸器疾患
呼吸器外科
肺腫瘍(肺がん・転移性肺腫瘍)や気胸に対し、胸腔鏡を用いて手術をしています。
図:胸腔鏡下肺切除の実際 |
ヘルニア
鼠径ヘルニア
鼠径(そけい)ヘルニアとは、いわゆる「脱腸」と呼ばれるものです。足の付け根であるそけい部から、腸や卵巣、脂肪などの臓器が飛び出した状態のことをいいます。老若男女問わず起こりますが、特に男性では生涯で10人に3人が発生する身近な病気です。
【症状】
足の付け根(そけい部)にこぶのような膨らみがみられます。痛みや違和感が出ることがあります。症状が悪化してかん頓といわれる状態になると、硬くなり、痛みがひどくなります。かん頓状態が続くと腸が詰まって腸閉塞になってしまったり、腸が腐って腹膜炎になってしまいます。そうなると、緊急手術が必要で命に関わる重篤な病態になることがあります。
【治療】
そけいヘルニアは手術以外では治せません。そけいヘルニアが診断された場合、手術もしくは経過観察(様子を見る)を選択することになります。しかし、そけいヘルニアは自然に治りませんし、症状が軽くても時間とともにどんどん大きくなり、痛みが出てくることがあります。また、将来かん頓を引き起こす可能性がありますので、症状に応じて手術のタイミングを検討していきます。
【手術】
手術方法は、①そけい部切開法と②腹腔鏡(ふくくうきょう)法があります。
そけい部切開法は従来から行われてきた方法で、足の付け根のそけい部をこどもでは1-2cm、大人では5-6cm切開して行う手術です。こどもではヘルニアの袋の根元を縛って閉じるPotts(ポッツ)法、大人ではヘルニアの穴をメッシュで閉鎖する手術を行います。
腹腔鏡法は近年、全国で普及してきた新しい術式です。おへそと他に1-2か所1cm程度の小さな傷で手術を行います。おなかの中から見ると、穴が開いているところが直接見えますので、反対側のヘルニアの有無も確認することができます。こどもではヘルニアの袋の根本を縛るLPEC(エルペック)法を、大人ではおなかの中からメッシュでヘルニアの穴を閉じるTAPP(タップ)法、TEP(テップ)法を行います。
手術の合併症として、可能性は低いですが、術後出血、キズの化膿、メッシュの化膿、再発、水腫(もともと腫れていたことろに水がたまる)、慢性疼痛(術後痛みが長引く)、血管や腸管・膀胱の損傷などが報告されています。
腹腔鏡手術は技術が必要ですが、そけい部切開法と比べて痛みが少なく、手術後の回復や社会復帰が早い、からだにやさしい手術となります。また腹腔鏡手術では、反対側のヘルニアの診断と同時手術が可能になるというメリットがあります。当院では腹腔鏡手術を第一選択としていますが、病状によっては適応にならない場合があります。
【足の付け根に腫れや痛みが出てきたら】
まずは当科を受診してご相談ください。ご本人のお持ちの病気やヘルニアの状態に応じて、経過観察や各種手術の中からご本人に合ったベストな治療法を提案させていただきます。当院では内視鏡外科学会技術認定医を中心に、質の高い手術を提供しております。
当院で手術を行われる場合の入院期間については、こどものそけいヘルニアに対しては、一泊二日(当日に入院して手術を行い、術翌日に退院)を、大人のそけいヘルニアに対しては、二泊三日(前日に入院して手術を行い、術翌日に退院)を基本としております。しかし、ご本人の病状や都合によっては入院期間の短縮や延長など、必要に応じて臨機応変に対応しております。まずはご相談ください。
腹壁ヘルニア
腹部手術(外科手術・泌尿器科手術・産婦人科手術など)の術後の創部に発生するヘルニアです。
【治療】
腹壁の弱い部分を「メッシュ」と呼ばれる人工の膜を用いて補強したり、腹腔鏡を用いておなかの内側から補強するなどの手術を行っています。
そけいヘルニアの模式図 |
腹腔鏡で見たおなかの中 |
穴のまわりの腹膜を剥がします |
穴をメッシュでふさぎます |
最後に腹膜を縫います |
腹腔鏡下そけいヘルニア手術の実際~TAPP法~ |
としてヘルニア外来を設置し診療を実施しています。
詳しくはこちら(ヘルニア外来)をご覧ください。
TAPP法 TEP法 | |
腹腔鏡下そけいヘルニア手術後のキズ |
乳腺疾患
乳がん
乳がんの進行度をマンモグラフィー、超音波検査、CT検査、MRI検査によって確認し、1.手術治療(乳房温存治療法・乳房全的・センチネルリンパ節生検・腋下郭清)、2.内分泌療法、3.抗がん剤治療、の治療を乳癌診療ガイドラインに準じて行っております。また、乳房温存手術後や転移病変に対して、放射線照射が必要な場合は、他院放射線治療科と連携した体制をとっております。
専門外来として乳腺外来を設置し診療を実施しています。
・乳がんについて、詳しくはこちら(乳腺外来)をご覧ください。
特長・特色
認定施設情報
日本外科学会外科専門医制度修練施設
日本消化器外科学会専門医修練施設
医師の紹介
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小野 仁 (おの ひとし) |
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