北海道医療新聞:北の医療を拓く 臨床研修病院紹介 (2015.10.16)

 北海道医療新聞社発行の「北海道医療新聞」2015年10月16日・2097号の臨床研修病院紹介に当院の紹介記事が掲載されました。

(以下、掲載記事)

厚別区のJCHO札幌北辰病院(佐々木文章院長・276床)は、21診療科を有する中核病院として、地域の急性期医療を担っている。2014年4月に運営母体が独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)へ移管され、札幌社会保険総合病院から改称し、新たなスタートを切った。初期臨床研修プログラムは自由度が非常に高く、ゆっくり落ち着いて学べる環境が整っているのが最大の特色だ。

自由度高く、ゆっくり学ぶ 1年目から総合診療外来に

 4月現在、同病院の常勤医師数は52人、うち指導医は15人。1日平均患者数は外来670人、入院175人、年間手術件数は1800人となっている。
 初期研修プログラムはプライマリケアの第一線臨床医、あるいは高度専門医に必要とされる医療に関する基本的知識・技術はもとより、患者の人格を尊重する倫理観を身に付け、多様化する医療ニーズに応えられる力量を兼ね備え、地域に密着した信頼される医師の養成を目標に掲げている。
 研修医は臨床研修委員会に所属して各課をローテートする体制で、ローテ順と期間は研修医の希望に可能な限り沿ってプログラムを作成可能だ。内科(糖尿病内科、腎臓内科、血液内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、リウマチ科)をはじめ、各専門家でさまざまな症例を体験でき、基本的診断法、検査法、手技を学ぶ。
 病院には救急部がないため、救急研修は1年間の「総合研修」として、各月1週間に研修中の診療海外で救急車搬送される症例につきファーストコールとなり、初期対応を学ぶことになる。さらに1年次後半からは週1回、総合診療科で外来と救急診療を行う。

 けが・災害救急指定と2次救急当番指定日(循環器・呼吸器、消化器、小児科)は副当直に入る。当直は1年目後半から副当直、2年目は原則1人当直となるが、いずれも月1回の研修小委員会で、研修状況や成果を把握した上で行う。当直時間帯は院内各科でオンコール体制を敷いており、必要に応じて専門医と連絡を取る。
 健康管理センターで特定健診や特定保健指導等の健診業務も体験できるほか、地域医療や在宅医療などの研修を通じ、少子高齢化における地域医療の現状・課題も学ぶ。協力施設は、精神科が大谷地病院、脳神経外科・神経内科が中村記念病院、地域医療は幌加内町国保病院や地域のクリニックなどがある。
 ローテ以外では、研修医は月1回行われる全職種参加の「ケーススタディーカンファランス」で、受け持ち症例の報告を学会形式で発表。毎週水曜日には全指導医参加のモーニングレクチャーが開かれる。海外文献を和訳して発表するジャーナルクラブも定期的に行っている。

快適な勤務環境をアピール

 同病院は1893年(明治26)年に開設された「関場医院」を源流に、100年以上の歴史を誇る。戦後は政府へ移管され「北海道社会保険北辰病院」となり、札幌市中心部の基幹病院として歩んだ。1990年に現在地へ新築移転し、「札幌社会保険総合病院」に改称。2006年には道内5番目、道央圏初の地域医療支援病院の承認を受けた。昨年独立行政法人移行に伴い、再び「北辰」の名を冠して急性期医療を提供、入院患者数は右肩上がりとなり経営安定化に寄与している。
 臨床研修は、研修医に外来診療を経験させるなど、早期から先駆的な取り組みで知られた。99年に300床未満の病院では全国初の臨床研修病院に指定され、07年に卒後臨床研修評価機構の認定病院となった。04年、05年には定員6人に対しフルマッチを達成し、その後も順風満帆だった。
 風向きが変わったのは09年度。全社連の危機が伝えられ、リウマチ科や呼吸器内科の常勤医引き揚げなどが相次いだ。研修医も敏感に反応したためか、この年はマッチングゼロという初めての事態に。やがて希望者数の低落傾向から定員は2人となり、近年は研修医確保に窮する状況が続いている。
 かつては、現在もプログラムの特色である、初期研修医が外来診察を行える研修が人気を博していたが、「他院でも実施されるようになり、アドバンテージがなくなったことも影響したのでは」と、プログラム責任者の吉田純一副院長は推測する。

こうした苦境にあって、「比較的ゆっくりとした環境で、プログラムの自由度が高く、自ら計画しての研修ができる」メリットを、吉田副院長は根気強くアピールする。道からの要請で、他院で一度ドロップアウトした研修医をこれまでに何度も引き受け、全員を修了させてきた実績もある。指導はきめ細かく「当院をドロップアウトした研修医はおらず、この方法を魅力に感じてくれる研修医は必ずいる」と話す。
 余裕あるローテーションや勤務スタイルのほか、院内保育園や病児保育など、働く環境も整備されている。指導医以外にも、コメディカルや事務職員によるバックアップ体制は万全という。全国に57病院を数えるJCHOへの組織変更も好機ととらえ、病院間研修を行えるように新たな研修を模索している。

吉田純一副院長(プログラム責任者)

 当院の研修の最大の特長は、ゆっくりした環境で、自ら計画してプログラムを作成できることだ。また、1年目の後半からは週1回総合診療科で外来診療を学ぶことが出来る。
 300床未満という規模ではあっても、病理医や放射線読影医もおり、研修科目は整っている。救急をバリバリやる病院ではないが、内科各科や小児科の専門医が豊富で、経験豊かな指導医も多い。札幌副都心に位置し、様々な患者が集まるため、プライマリな疾患もたくさん見ることが出来る。ゆっくりと学びたい研修医には最適な環境と確信しており、実際に当院で学んだ研修医は頼もしく育っている。
 新卒後臨床研修制度が始まった当初は先駆的病院として人気を集めたが、近年は受験者が3~4人、研修者が1~2人という状況が続き、大変苦慮している。しかし実際に見学に来てもらえれば、研修環境の良さを実感してもらえるはずだ。
 JCHOという全国組織を生かし、病院間研修ができるよう、研修の形も新たに組み直しているところだ。ぜひ当院で研修を受けてほしい。

1年次 矢吹 郁美氏

 14年に札医大を卒業しましたが、出産・育児のため1年間待っていただき、今年から研修をスタートしました。当院を選んだのは、見学時に吉田先生から私生活のことも考慮した親切なアドバイスをいただき、子育てしながら働く環境が整った当院ならば、しっかりした研修ができると思ったからです。
 当院は、診療科と期間を自分で選べます。私は最初の2ヵ月間は消化器内科を回りましたが、ブランクのため心と体がなかなか環境に追いつけませんでした。そこで自分の医学知識を整理したいと思い、通常は2年目でなければ取れない放射線診断科を回らせてもらいました。そのおかげで、現在は研修医が身につけるべき知識と向き合えるようになりました。冬に患者が多い呼吸器内科と小児科も、時期に合わせて選択できました。
 10月からは総合診療科で週1回の外来診療が始まりました。他科を回っていても、総合診療科からのコンサルテーションは大変勉強になります。また、2次救急の当直では、コモンディジーズにたくさん触れられるのが魅力です。

(JCHO札幌北辰病院)