厚別区支部だより:睡眠時無呼吸症候群の入院検査を始めました。 (2012.07.20)

 札幌市医師会厚別区支部発行の「厚別区支部だより」第17号に栗原耳鼻咽喉科部長の記事が掲載されました。

(以下、掲載記事)

 睡眠時無呼吸症候群は新幹線の居眠り運転の事例から広く知られるようになり、それほど希な病気でないことが分かってきました。
 睡眠時無呼吸症候群は、日中傾眠、作業効率の低下、追突事故の原因となりうる上に重度の場合突然死の可能性もあり、この病気による社会的損失は無視できません。このためその診断治療の推進が望まれます。
 睡眠時無呼吸症候群の定義は10秒以上の無呼吸・低呼吸が7時間以上の睡眠で30回以上、または一時間当たりの無呼吸・低呼吸数が(AHI)が5以上です。
 診断は、1)終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定、2)簡易アプノモニター、3)ポリソムノグラフィー(PSG)で行います。
1)はスクリーニング目的に行われます。2)3)は呼吸状態を経時的にモニターするもので特に3)PSGは脳波を記録して睡眠状態を把握できるためより正確な診断が可能です。
 保険上、PSGを行うためには、1)または2)を行い睡眠時無呼吸症候群が疑われることが条件となります。
 睡眠時無呼吸症候群の標準治療は経鼻持続陽圧呼吸装置(nasal CPAP)です。これは呼吸時に陽圧をかけることにより気道の虚脱を防止し無呼吸を防止する装置です。保険適応は、AHIが40以上、またはPSGでAHIが20以上かつnasal CPAP使用で睡眠段階が正常化する症例です。
 当院では2011年10月にPSGを導入しました。検査は一泊入院で行っています。流れとしては夕方に入院していただき、検査機器を装着します。食事、洗面、病棟内の移動などはポータブルな装置であるため自由にでき、そのまま就寝いただきます。翌朝、起床後に機器を回収し朝食後に退院となります。
 データを解析し退院1週間後に検査結果を説明します。
 今後、入院検査の流れ、データを検証しつつ、徐々に症例を重ねていきたいと考えています。

(札幌社会保険総合病院 耳鼻咽喉科 栗原秀雄)