かねて懸案でありましたパネル「当院のあゆみ」と展示コーナーが薬剤部窓口前に設置され、10月3日(月)に除幕式を行いました。除幕式には、北海道医師会長の長瀬清先生と元札幌市医師会長の島田保久先生にご来賓としてご臨席いただき、また佐野文男名誉院長はじめ多くの職員に出席していただきました。長瀬先生と島田先生は北海道医史学研究会の会長と代表幹事でもあります。お二人から大変ご丁寧なご挨拶をいただきました。
当院の創立は、明治26年(1893)関場不二彦先生が「関場医院」として開設されたのに始まり、「北辰病院」として91年間続きますが、平成2年に札幌北辰病院として現在地に移転し、今年で118年目ということになります。また、先生が来道したのは明治25年(1892)ですので、来年は来道120年目にあたることになります。
初代院長の関場不二彦先生は恐らく将来とも現れないような偉大な方ではないかと思います。北海道医師会の初代会長や札幌市医師会の初代会長もされ、北海道での初めての医学雑誌『北海医報』を当時の北辰病院から発行しています。また、昭和8年に『西医東漸史話』という、医学史の本を発行されております。これは3巻に渡った1319ページという大変な大著ですが、このほかにも膨大な著述が稿本として残されています。
私は先生のような先人の医療に関する闘いから学ぶべきものがあるのではないかと思い、本年4月拙著『北辰の如く関場不二彦伝』を刊行しました。この本の執筆に当たって収集した資料も含め、まだまだ知られていない創設期の当院のことや、関場不二彦先生のことを多くの方々にも知ってもらいたいと思っていました。拙著発刊を機にパネルとしてまとめると共に資料の一部を展示してはどうかと思い検討してきましたが、今回関係者のご努力によって実現したものです。
当院の院是は「当院は人間愛と人権尊重を基本とした全人的医療をめざします」というものですが、これこそ先生が目指した医療の本質を表した言葉と思います。近年の激しい医療改革の嵐の中で医療はますます混迷を深めています。このような時期だからこそ関場不二彦先生の生きざまを知り、改めて医の原点に立ち返ってみると共に当院の歩みを振り返ってみる必要があるのではないでしょうか。
当院は厚別区ただ一つの公的機能をもった地域医療支援病院として、地域の医療機関と協力して地域の医療・保健・福祉に貢献することを使命としてきました。すべての職員が関場不二彦先生の遺志を引き継ぎ、院是にも掲げている「全人的医療」をこれからも推し進めて行くことを期待するものです。
(院長 秦 温信)